小説「ブラックボックス/篠田 節子」を読んでみた

ネタバレなしの小説レビュー

篠田節子さんの小説「ブラックボックス」を読みました。

あらすじ。

あなたの食卓で、今、何が起きているのか――
完璧にマニュアル化されたハイテク農場で安定的に生産され、
徹底的に衛生管理され、冷蔵庫並みに冷えた深夜の野菜工場で
外国人労働者たちに美しくパック詰めされた、
「安全安心」が謳い文句のスタイリッシュな野菜サラダ
そのサラダが、あなたの健康を害しているとしたら……

会社の不祥事で故郷に逃げ帰ってきた元広告塔・栄実、
どん詰まりの地元農業に反旗を翻した野菜生産者・剛、
玉の輿結婚にやぶれ栄養士の仕事に情熱を傾ける聖子。
中学時代の同級生三人が奇しくも関わり、悩み、たどりついた
「食」の安全を揺るがす恐怖の実態とは?

「安定、安心、安全」を目指したはずの「食」の現場で、
利益追求と最先端テクノロジーが食と環境の崩壊連鎖を生む。
徹底した取材と一流のサスペンスで
今、そこにある「食」の危機を提示する
渾身の大型エンターテインメント!

かなりの量の取材をされて書かれたことがよくわかる内容でした。

「食の安全」をテーマに書かれた内容なのですが、小説というより「ノンフィクションもの」を読んでいるような気分にもなり、非常に考えさせられます。

私は過去に、「食の安全」系の本であったり、「食品の裏側」系の本をそれなりに読んできました。

いわゆる「暴露本」ですね。

それら暴露本よりも「ブラックボックス」の方がよほど真剣に食について考えさせられました。

そして、私は篠田さんの本を読むのはこれで2作目なのですが、人物設定がまあ上手いこと。

登場人物の心理描写がリアルなんですよ。

それはキャラクター一人一人もそうですし、大勢が一人をいじめるという大衆心理であったり、田舎特有の閉そく感であったりと、心理描写がリアルです。

この小説は、かなり長い話です。

正直、途中で飽きてもおかしくないくらい長いです。

と言いますのも。

篠田さんの小説の特徴なのかはわかりませんが、物語の序盤での「掴み」はそれほど強くないんですね。(これは「神鳥」でも感じたことでした)

本来「掴み」がないと、続きを読みたいとは思えなくなり途中で読むのをやめてしまうこともあります。

物語が長くとも、序盤で「掴み」さえあれば多くの人は続きを読むと思います。

ブラックボックスには「掴み」がない上に、長いんです。

ですがそこは篠田さんの手腕なのでしょう。

キャラ設定が上手く、登場人物の心理描写がリアルなため、大きな「掴み」がなくとも、ついつい先を読んでしまうんですね。

さらに、「ブラックボックス」を読んで感じたことは、「篠田さんは締め方が上手いな」と。

私は篠田さん作品の終わり方が好きです。

ネタバレになるので詳しくは書きませんが、終わり方が何とも言えずにリアルで好きです。

いかにも物語物語していないと言いますか、現実にありそうな終わり方であり、読者が前向きな気持ちになれるような上手な終わり方をしてくれるんですね。

ですので、「最後まで読んでよかった」と思えます。

3作目も近いうち読もうと思います。

食の安全について考えたい方、リアル過ぎる怖い話(ある意味)を読みたい方は、ぜひ「ブラックボックス」を読んでみてはいかがでしょう?

一方で、空想の世界に逃げ込みたい方には向いていないと思われます。


ブラックボックス (文庫) [ 篠田節子 ]