小説「神鳥(イビス)/篠田 節子」を読んでみた

ネタバレなしの小説レビュー

篠田節子さんの小説「神鳥(イビス)」を読みました。

あらすじ。

夭逝した明治の日本画家・河野珠枝の「朱鷺飛来図」。死の直前に描かれたこの幻想画の、妖しい魅力に魅せられた女性イラストレーターとバイオレンス作家の男女コンビ。画に隠された謎を探りだそうと珠枝の足跡を追って佐渡から奥多摩へ。そして、ふたりが山中で遭遇したのは時空を超えた異形の恐怖世界だった。異色のホラー長編小説。

私は篠田さんの作品を読むのがこれが初めてです。

正直なところ、「神鳥」は前半が退屈で仕方がありませんでした。

というのも、「それらしいこと」がまったく起きずに物語が進んでいくのです。

ホラー小説ということ以外は何も情報がないまま読み始めたのですが、本の半分くらいまではオカルト現象も、人間の狂気も感じられないまま、ただただ退屈なストーリーが進行していくだけでした。

途中で読むのをやめようかとも思いましたし、この本を読み始めたことを後悔し始めていました。

ですが、最後まで読み切ってよかったと思えます。

後半からラストまで一気に引き込まれました。

そもそも、前半が退屈だったと言っても、篠田さんの文章は読みやすく上手いので、読むこと自体は苦痛ではありません。

そして、キャラクターが魅力的であることも確かです。

32歳の女性イラストレーター谷口葉子と、28歳バイオレンス小説作家の美鈴慶一郎の凸凹コンビの会話は楽しめます。

私は男ですが葉子の気持ちもしっかり理解できますし、美鈴の男心も理解できます。(篠田さんは女性ですが、男心を理解されている方なのだと分かります)

二人のキャラがラストにとても活きてきます。

前半の退屈さを吹き飛ばすようなラストで、読後感は最高です。

また。

93年の小説ですが、古さを微塵も感じません。

テレビドラマや映画ではなく活字での表現なので、我々の頭の中で自由に映像化されるわけです。

他にも、オリジナル性の高さもポイントです。

近年のラノベのような「この話、どこかで聞いたことあるぞ?」的なストーリーではありません。

完全に独自の世界観に引き込んでくれます。

前半の退屈さ以外にマイナス面は見当たりません。

文章良し、キャラ良し、ラスト良しで、物凄く良い小説だけに、前半が残念でなりません。

前半で離脱してしまう人がいるかもしれませんからね。

私も危なかったですし。

あくまでも私の個人的な感想ですが、前半に大きな掴みが欲しかったように思います。

「え?嘘?なにそれ?先が知りたいぞ」的な大きな掴みが前半にあれば、もっと万人受けするホラー小説になっていたのではないかと思えます。

もしもあなたが「神鳥」を読まれるなら、前半で投げ出さずに最後まで読むことをお勧めします。

読む価値のある小説です。


神鳥(イビス)【電子書籍】[ 篠田節子 ]