大石 圭さんの小説「アンダー・ユア・ベッド」を読みました。
あらすじ。
ある雨の降る晩。突然、僕は佐々木千尋を思い出した。19歳だった彼女と僕がテーブルに向き合ってコーヒーを飲んだこと。彼女の亜麻色の髪、腋の下の柔らかそうな肉、八重歯、透けて見えたブラジャーの色や形…9年も前の、僕の人生のもっとも幸福だった瞬間―。そして僕は、佐々木千尋を捜してみることに決めた。もう一度、幸せの感触を思い出したいと願った―。それは盲目的な純愛なのか?それとも異常執着なのか?気鋭が書き下ろす問題作。
私は小説に限らず、漫画や映画などはすべて、事前情報を極力入れないようにしています。
↑にあるような、簡単な作品紹介すら読みません。
だって、少しでも事前情報を入れてしまうと、作品本来の楽しみ方ができませんから。
これは私の経験的に、事前情報を一切シャットアウトしておいた方が、楽しめるんですね。
ということで、今回の「アンダー・ユア・ベッド」も何も知らない状態で読み始めたのですが、すぐに驚きを味わうことになりました。
私はなんとなく、オカルト系のホラーかと思っていたんです。
タイトルもちょっとそれっぽいですし、なによりも大石さんと言えば「呪怨」のイメージがあったので、勝手にオカルトの怪談を想像していました。
だから、読んでみてビックリ。
幽霊が出てこないどころではなく、そもそもホラーとしての括りに入れてはいけないような作品でした。
一応、ジャンル的にはホラーになるんでしょうか。
恐怖エピソードはほぼ0に近いです。
でも、楽しめます。
なんというか、十代の頃の気持ちを思い出してしまうような作品でした。
とくに男性が読めば、きっと十代の頃の淡い恋心を思い出すと思います。
ネタバレしないように説明するのは少し難しいのですが、ある男の初恋の物語なんです。
その男はとても不器用で、恋心を表現するのが苦手なんです。
苦手?・・・苦手なんてもんじゃないですね。
思いっきり歪んます。
これでもかと歪んではいるものの、好きな人を想う気持ちは誰よりも純粋なんです。
後は、あなたが読んでのお楽しみ。
きっと楽しめます。
世界観にどっぷり浸かれると思います。
ホラーを求めて読んだら拍子抜けをする可能性はありますが、良作小説です。
私自身、オカルト作品だと勝手に決めつけて読み始めたにも関わらず、ハマっちゃいましたから。
思いっきり歪んでいるけれど、誰よりも真っすぐな恋心を持った男の話です。
ぜひ、その矛盾をお楽しみください。