小説「死者のための音楽/山白 朝子(乙一)」を読んでみた

ネタバレなしの小説レビュー

山白 朝子(乙一)さんの「死者のための音楽」を読みました。

あらすじ。

死にそうになるたびに、それが聞こえてくるの――。手首を切った母が搬送された病室で、美佐は母の秘密を知る。幼い頃から耳が不自由だった母は、十歳のときに川で溺れて九死に一生をえた。その後、川底で聞いた不思議な音楽を追い求める。夫に先立たれ、一人で美佐を育てた母。彼女に贈られた、美しい音楽とは。表題作「死者のための音楽」ほか、人との絆を描いた怪しくも切ない七篇を収録。怪談作家、山白朝子が描く愛の物語。

これで私は、山白 朝子(乙一)さんの作品は三作目です。

今回読んだ「死者のための音楽」は、静かな作品だな、という印象を持ちました。

ジャンル的には何になるんでしょうか。

ホラーファンタジーでしょうか。

静かな雰囲気の短編ホラーファンタジーと言えば、伝わりますか?

短編集があまり得意ではない私ですが、最後まで読める作品でした。(私は短編集は途中で疲れてしまうことが多く、最後まで読めないことも多々あります。笑)

ただ、私としては残念な点が2つありました。

1つ、ストーリーに繋がりがなかったこと。

短編集って、1話1話世界観が違うので、話が変わるたびに世界観を理解するための余分なエネルギーを使ってしまうんですよね。

前回読んだ「エムブリヲ奇譚」も短編集だったのですが、ストーリーや世界観が繋がっていたので、余分なエネルギーを浪費せずに済みました。

ですが、今回の「死者のための音楽」はストーリーに繋がりがないので、余分なエネルギーを浪費してしまったように思います。

2つ、時代設定がバラバラなこと。

現代の設定の話もあれば、昔の日本と思われる時代(江戸時代かな?)の話もあり、これまた世界観を理解するためにエネルギーを消耗してしまいました。

世界観を共有させない短編集であるのなら、せめて3話くらいでまとめてくれるともっと読みやすかったように思います。

余分なエネルギーの消耗が多かったという意味で、その2点が残念だったな、と。

ただ、内容的には楽しめました。

とくに、「鳥とファフロッキーズ現象について」という話が秀逸でした。

この作品はどことなく「暗いところで待ち合わせ」に似た雰囲気の作品で、静かな中に怖さが潜んでいるという良作だったと思います。

主人公の女の子が引っ込み思案で、良い感じの味を持っています。

乙一さんは、引っ込み思案な女性を描くのが得意なんだな、という印象を受けます。

トータルで見て、「死者のための音楽 」は短い話が好きな人は楽しめると思います。

マイナス面も書きましたが、乙一さん特融の独自の静かな世界観は、一度は体感してみる価値はあると思いますよ。


死者のための音楽 (角川文庫) [ 山白朝子 ]