小説「結婚詐欺師/乃南アサ」を読んでみた

ネタバレなしの小説レビュー

乃南アサさんの小説「結婚詐欺師」を読みました。

この小説は上下巻と分かれているのですが、上下巻を一気に読みました。(止まりませんでした)

あらすじ。

橋口雄一郎は40代のプロの結婚詐欺師。カツラ・洋服・職業・車を使い分けて変身、女性の心理を逆手に取る巧みな話術で誘惑し、金をだまし取っていた。東京・小滝橋署の刑事、阿久津は偶然かかわった結婚詐欺の被害届から、プロの匂いを感じ取り捜査を始めた。やがて松川学という前科者が浮上、身元の確認に追われる。一方、橋口はゴルフ練習場で見つけた女性に次の狙いを定めた―。

結論から言うと、めちゃくちゃ面白かったですね。

私は当ブログで小説を酷評することはありません。

けっこう褒めていることが多いです。

それはなぜかというと、つまらない作品は途中で読むのをやめてしまうので最後まで読まないんです。

ですので、レビューを書いている時点で一定以上気に入っているとうことなんです。

もしかすると、私がべた褒めしても説得力をあまり感じないかもしれません。笑

ですが、この「結婚詐欺師」は本当に面白い作品でした。

そもそも私は「詐欺師モノ」が好きで、漫画なら「クロサギ」、映画なら「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」や「マッチスティック・メン」が大のお気に入り。

だから多少採点は甘い可能性はあります。

ただ私の「詐欺師モノ」好きを差し引いても、「結婚詐欺師」が良作であることは間違いないと思われます。

そもそも、「詐欺師」という言葉だけに釣られて手にとったこの本。

何の期待もしていませんでしたし、どんな物語なのかも知らなければ、乃南アサさんの存在も存じませんでした。汗

でも、読み始めてからあっという間に引き込まれましたよ。

まず、詐欺師の男橋口雄一郎がまた魅力的なんです。

言葉巧みに女性の心を操っていきます。

前半は私もこの橋口雄一郎に感情移入して読んでいたのですが、話が進むにつれてだんだんと感情移入できなくなってきました。

というのも、この橋口はあまりに人の心がないと言いますか。

やっていることがあまりに残酷なんです。

私の気持ちがだんだんと橋口から離れて行くと、今度は事件を捜査している警察の阿久津に感情移入し始めてしまいました。

おそらくこれは乃南アサさんの狙いなのでしょう。

乃南さんの作品を読んだのはこれが初めてですが、いろいろと上手いな、と感じずにはいられません。

読者の感情を操るという意味でもそうですし、男心を描くのも非常に上手いんです。

男の読者が読んで、違和感が全く感じないんです。

私は女性作家さんの小説で違和感を感じることがときどきあります。

それは登場人物の男が「あり得ない」考えを持ったり、「あり得ない」行動をとったりするからなんです。

「普通の男はこんなとき、そんな行動はしないと思うぞ?」と思ってしまうんですね。

それが複数回繰り返されると、私は本を閉じてしまいます。

そして、二度と開きません。

その点、乃南さんは脱帽でした。

最初、この物語は男性が書いたのかと思いました。

それくらい男の気持ちがリアルなんです。

そして、乃南さんは女性なんですよね。

女性だからこそ、女性心を表現するのはもっと上手いんです。

なんと言えばいいか、男性だったら分からないような微妙な表情や体の変化まで文章で表現しているんです。

そういう女性だからこそわかる体の変化というのは、男性作家ではなかなか書けないんじゃないかな、なんて思いながら読んでいました。

詐欺師モノが苦手な方以外には、めっちゃお勧めできる作品だと思います。

ストーリーも抜群ですし。

少なくとも私は、何度も読み返したいと思えるほど気に入ってしまいましたから。笑

近々、乃南さんの他の作品もチェックするつもりです。


結婚詐欺師(上巻) (新潮文庫) [ 乃南アサ ]